労働保険 Q&A
事業主が雇用保険の被保険者となったことの届出をしてくれない場合
質問
 約1ヶ月前からある会社で働いていますが、事業主は、私が雇用保険の被保険者となったことの届出をしてくれません。このような場合、自分で公共職業安定所に申し出て必要な手続をとることができるのでしょうか。
回答
 事業主が故意に届出を怠っているような場合、雇用されている者が自ら被保険者資格の取得の確認の請求を行うことができる。

 事業主は、雇用保険法第7条の規定により、その雇用する労働者が被保険者となったこと及び被保険者でなくなったことについて、その事業所の所在地を管轄する公共職業安定所に届け出なければなりません。

しかし、事業主が故意に届出を怠っているような場合等については、労働者の権利の保障をはかるために、その事業主に雇用されている者が自らその被保険者資格の取得等の事実があったことを主張し、その被保険者資格の取得等の確認の請求を行うことができる(雇用保険法第8条)こととなっています。

したがって、ご質問のような場合には、ご本人から直接、被保険者であることの確認の請求を行うことができます。この請求は、文書または口頭により、事業所の所在地を管轄する公共職業安定所長に対して行うこととなっています。

この確認の請求を文書で行おうとする場合には、
@氏名、住所及び生年月日、A請求の趣旨、B事業主の氏名並びに事業所の名称及び所在地、C被保険者となったこととその事実、その事実のあった年月日及びその原因、D請求の理由の列記されている事項を記載した請求書に、証拠があるときはそれを添えて、提出しなければなりません。

また、口頭で確認の請求をしようとする場合は、上記の事項を公共職業安定所長に陳述し、証拠があるときはこれを提出しなければなりません。この場合、陳述を受けた公共職業安定所長は、聴取書を作成し、請求者に読み聞かせたうえ、署名または記名押印させることとなっています。

なお、この手続を行う際には、次の点に留意してください。  

@

 すでに被保険者証の交付を受けた方が確認請求をする場合には、文書であると口頭であるとを問わず、その被保険者証を提出しなければなりません。

A  「請求の趣旨」とは、たとえば、「平成○○年○○月○○日に雇用保険の被保険者となったことを確認されたい」といったものです。
B  「請求の理由」とは、何月何日から何某雇業主と雇用関係を締結したこと、何某事業主は労働者を雇用して何々事業を行っていること等、請求の趣旨の裏付けとなる事実のことです。
C  証拠とは、たとえば、採用通知、雇用契約書、辞令、健康保険被保険者証その他被保険者資格取得の事実判断の資料となるものです。

この請求書を公共職業安定所長が受理し、被保険者資格の取得の確認を行ったときには、事業主から届出があった場合と同様、事業主および労働者に対して雇用保険の被保険者となったことの確認通知および被保険者証の交付がおこなわれます。この場合、被保険者証は労働者に対して直接交付されることとなっています。また、請求に係る被保険者資格の事実がないと認められたときには、当該確認の請求をした本人に対して「雇用保険の被保険者となったことの確認請求却下通知書」により、公共職業安定所長から通知されることとなっています。

参考資料1 平成14年1月29日付朝日新聞(朝刊)
 聞きたい 雇用保険未加入 会社どう対応

 私が5年間勤めているデザイン会社は雇用保険に加入してくれません。もう何年も何度も要求しているのですが、社長は「ちゃんとするから待って」の繰り返しです。

 仕事は社長夫妻を含め6人でしています。私は当初、アルバイトでしたが、3年前、「月140時間以上働いているので固定給にしてほしい」と頼み、正社員になりました。保険に未加入のままでは将来的に不安です。会社は必ずしも雇用保険に入らなくてもいいんですか。会社に加入してもらう方法はありませんか。(大阪府豊中市 38歳)

 職業安定所に相談を   回答=社会保険労務士・谷澤田鶴子さん

 当然あるべきセーフティーネットがなく、将来に不安を感じながら働いている労働者は少なくありません。このようなケースでは、労災保険の手続きも怠っているのではないかと心配されます。労災保険と雇用保険を総称して労働保険と言い、原則、強制的な保険なので、労働者を1人でも雇っていれば、事業主は手続きをし、保険料を納めなければなりません。

 雇用保険の被保険者は、適用事業に雇用される労働者で、パートでも週の所定労働時間が20時間以上で、1年以上雇用される見込みのある人から該当します。

 ご質問者は週30時間以上の労働をしているので、一般被保険者です。一度、公共職業安定所に実態を話されてはいかがでしょうか。行政から社長に適切な説明があれば、手続きをする可能性が大きいのではと思います。

 職安所長に被保険者資格の確認を請求する手もあります。請求を受けると、職安所長は事実関係を調査するからです。

 被保険者にならないまま10年以上が経過したとしましょう。退職時に申し立て、さかのぼって雇用保険の手続きをしたとしても、さかのぼりの可能な過去2年間しか被保険者期間とされないため、失業における給付が少なくなります。事業主は、手続きを怠ったことによって生じた退職者の損害を賠償する責任があるという判例もあります。

 ご質問者自らの行動こそが自らを救う最善の策になると思います。

参考資料2 月刊社会保険労務士 2001年4月号(30・31n)
 労働社会保険不加入に関する使用者責任(裁判例)

 使用者がその事業について労働保険及び社会保険に加入しないことに関しては、法律上問題になったことをあまり聞かないが、薬膳薬局事件(東京地裁平成11年11月12日判決)は、零細規模の商店主が、労働者の再三の要求にかかわらず、雇用契約書に記載されている条件に違反して、労働保険及び社会保険に加入しなかったため、労働者が自ら国民年金及び国民健康保険に加入した上、退職後雇用保険の失業手当を受給することができなかったことが商店主の不法行為であるとして、その慰謝料10万円を支払うことを命じた。

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